■横型6.漆地螺鈿と水晶が表した繊細な文様
この文様について
中倉088 螺鈿箱
漆地螺鈿と水晶が表した繊細な文様
複合的な八弁唐花を中心に据え、周囲に八枝の花卉文を回して豊饒で端正な絵柄を構成。実物は正倉院の宝物の中でも珍しい漆地螺鈿の印籠蓋造である。螺鈿に毛彫を施して文様を表し、八弁唐花の内側にある六弁花の部分のみ金平脱、つまり金の裁文を貼り漆をかけた後に漆塗膜だけを削り文様を表す手法を用い、残りは螺鈿である。花心にはすべて半球状の水晶を嵌め、その下には赤や青の顔料で描かかれた小四弁花文が透視できる伏彩色手法が用いられている。ここでは唐花や花卉のシルエットに注目し、デザインを構成した |
文様を彫った2枚の板の間に布を固く挟み、文様の部分に孔をあけて染料を注いで染める夾纈。奈良時代中期に流行する唐花文を表すのに適した技法とされる。
この歌について
大伴宿禰家持の、娘子に贈りし歌七首より
千鳥鳴く 佐保の河門の 清き瀬を
馬うち渡し いつか通はむ
(大伴家持、巻4・七一五)
千鳥の鳴く佐保の川の渡し場の清い瀬を、馬を渡して通うのはいつのことだろうか。