■横型13.大和の山野を思わせる愛らしい樹下動物交
この文様について
北倉044 鹿草木夾纈屏風
大和の山野を思わせる愛らしい樹下動物交
もとの屏風では、ササン朝ペルシアの樹下動物文の系統を引く、生命を象微する大きな樹木の下に鹿が向かい合って立つ構図である。ただ、樹木と鹿の空間がゆったりとられていること、周囲に花卉、草花や岩などが配されていること、そうしたことからペルシア本来の宗教性とは異なった、日本の山野の風景描写の傾向が漂っている。白絁を地に樹幹、樹葉、花卉の葉と草を緑色で染め、樹下の岩を薄藍で、蔦と鹿を茶色で、花と鹿の角を薄茶色で染めている。鹿という愛らしいモチーフが絵柄を親しみやすく見せている。
この歌について
大伴宿禰家持の、娘子に贈りし歌七首より
千鳥鳴く 佐保の河門の 清き瀬を
馬うち渡し いつか通はむ
(大伴家持、巻4・七一五)
千鳥の鳴く佐保の川の渡し場の清い瀬を、馬を渡して通うのはいつのことだろうか。